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週刊青年ワタクシ

自分へのメモと思った事、レポライターごっこをするためのもの。

恩着せがましい

ある晴れた日の事。男は町を歩いていました。

久しぶりの休日、買い物を終え家に帰るとこです。

てくてく歩いていると、曲がり角から突然肌着が現れ、ドン、と男とぶつかってしまいました。

地面には男と肌着の荷物が散乱しています。

「大丈夫かい?」と問いながら男は肌着に手を差し伸べました。

すると肌着は「大丈夫です」と弱々しく答え、起き上がります。

肌着は自分の荷物を拾い上げると、足早にその場を去ろうとしていました。

肌着自身は袖がのびきっていて、だらしがない見た目です。

不審に思った男は肌着を呼び止めました。

「どうしてそんなに焦っているんだい?」

「早くいかないと、ご主人様が困ってしまうんです」

「どうゆうことだ?」

話を聞いてみると、肌着の持ち主は肌着に買った品物を持たせ、家まで運ばせているようです。

「全く話が見えない。そのご主人様は今どこにいるんだ?」

「ご主人様は多忙な方なので、先にお車に乗りお帰りになられました。私も早く帰らないとご主人様にお仕置きをされてしまいますので、これで失礼します」

「お仕置き?君のご主人様は荷物を持たせた挙句お仕置きなんてするのかい?」

「えぇ。けれどもそれは、私が無能な肌着だから悪いのです。早く帰りご主人様に着て頂かないと、ご主人様の乳首はシャツで擦れてしまいます。それに、ご主人様にこの品を届けなくてはいけません」

肌着が大事そうに持つ荷物は、大手洋服ブランドの袋でした。

男は、ご主人様の意図がなんとなくわかってきました。

「それはなんとも、おかしな話じゃないか。自分で買ったのだから、自分で持って帰ればいいものを。それに、君のような肌着の足で車に追いつくなんて無理だ。日が暮れてしまうよ。大方、君のご主人様は無理難題を押し付けているだけだろう」

肌着の顔が一瞬曇りました。

「そんなことは、ありません。ご主人様は私を必要としてくれているのです!」

「じゃあ、その袋の中を見てみなよ」

男は肌着の持つ袋をひったくると、中身を肌着に見せつけました。

それは、真っ白な新しい肌着でした。

「こんなもの、君がお払い箱って証拠じゃないか。このまま家に帰れば、君はご主人様に捨てられてしまうんだぞ。悪趣味なやつだ、古い肌着に新しい肌着を運ばせるなんて。」

肌着の表情がかたまり、じっと地面を見つめています。

「それでも私は、ご主人様にお届けしなくてはなりません」

「しなくていい、そんな事。肌着の仕事は物を運ぶことではなく、着られることだろう?物を運ぶなんてこと、飛脚に任せておけばいい。それなのに君のご主人様ときたら、そんな奴の乳首なんて擦れて赤くなってしまえばいいんだよ!」

肌着は肩を落とし、がっかりとしています。

己が信じ、仕えてきた主人に要らないものとされていた事に気づき、ショックを受けているようです。

呆然としている肌着に、男は再び問いかけました。

「よければ、僕の所に来ないか?特別裕福なわけではないが貧困ではない。君一人くらい養う事はできる」

肌着は顔を上げ、信じられない物を見るような表情で話しました。

「いいんでしょうか?私のような肌着があなたのお家にお邪魔させていただいても」

「気にするな。いつも一人で寂しかった所なんだ。すぐ近くにあるから、ついてきてくれ。」

かくして、男は肌着を家に招き入れました。肌着の新しい生活が始まるのです。

 

つづく